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美濃和紙の里(岐阜県美濃市)を訪れて
posted by : カテゴリ:デザイナーChihiro(チヒロ) ,伝統産業
手漉きの技法を守る人・機械抄きに誇りを持つ人
以前から岐阜県の特産品「美濃和紙」にとても興味があり、
美濃市(和紙の産地)へ行って生産工程を見てみたいなぁ~と思っていました。
2013年3月15日(金)、タイミングよく「美濃和紙見学ツアー」があったので
参加してきました!
日本三大「和紙」産地として美濃市が発展した理由は、
その昔、近江商人がいて「京都」という販売マーケットがあったこと、
美濃の「水(超軟水)」が和紙作りに適していたことなどが挙げられるそうです。
手漉きの「幸草紙工房(さいぐさがみこうぼう)」職人の加納武さん、
そして機械抄きメーカーの「丸重(まるじゅう)製紙企業組合」さんに
それぞれお話を聞くことができました。
幸草紙工房の手漉き職人の加納さんは、
伝統の技法をしっかり守り、手漉きに必要な道具を作る職人さん(手漉きに関わる人)の
仕事(技術)も同じように大切にしていきたい・・・
と手漉き和紙にかける想いを語ってくださいました。
一方、丸重製紙企業組合さんは、
「手漉きで作ったものだけが和紙ではない」と
機械抄きの和紙にも誇りを持っていらっしゃいます。
理事長さんの「和紙の定義」は・・・「素材の特徴を活かした日本製の紙」
とのこと。
手漉きだけでは伝統を後世に引き継ぐことは難しいので、「機械抄き専門」として
新しいことにチャレンジしながら「和紙」を守っていきたいという考えでした。
手漉き和紙の良さ
なんといっても手漉き和紙は
「自然の恵み」をいただき、生活の中に必要なモノへと手作業で
カタチに作り上げていく「素朴」な感じが良いです。
手漉き職人の加納武さんから、楮(こうぞ)、みつまた、雁皮(がんぴ)など
手漉きに使われる原料の説明をしていただきました。
楮(こうぞ)を乾燥させたもの、茹でて柔らかくしたものを
比較して見せていただきました。
茹でて柔らかくした楮(こうぞ)から「チリ(ゴミ)」を一つ一つ取り除きます。
この「チリ」は、「チリ紙」の元になるそうです!知らなかった~!(驚)
チリが取り除かれた楮(こうぞ)を丁寧に叩いていきます。
植物の繊維質を均等に際立たせていくために叩くのです。
両手で木槌を持って、トントントンとリズムよく叩いていきます。
水と粘り気のある液体(植物から採ったもの)と原料を棒で混ぜて。。。
手漉きの道具は、専門の道具職人さんが作ったもの。
和紙の手漉き用に細かい部分にまで工夫がされています。
この道具を作ることができる職人さんも今は少ないそうです。
手漉きの伝統だけでなく、道具を作る職人さんも大切にしなければ。。。
縦に横に揺らしながら和紙を漉いていきます。
機械抄きとは異なる、手漉きならではの厚みと質感。
漉いた美濃和紙を道具から外していきます。
手漉き用の簾から漉いた和紙をはがしていきます。
何枚にも重ねられた美濃和紙。
一枚一枚同じ作業で作り上げていきます。
職人 加納さんの物静かなお話の中に、手漉き和紙への情熱を感じました!
紙工房ののどかな風景♪
木製の洗濯バサミが、じっとその場所で自分の仕事(役割)を待っていました。
機械抄き和紙の良さ
丸重製紙企業組合の和紙ブラザーズ【兄】こと、辻晃一さんに
まずは機械抄きの原料をご説明いただきました。
パルプ(木材パルプ、麻パルプ)など・・・実際に手でちぎって、
原料の質感を確認しました。
麻パルプを原料とした紙は、岐阜提灯(盆提灯)にも使われるとのこと!
次に「ビーター」「パルパー」という機械の説明。
原料(繊維)は「切らずに叩く」、その後ドロドロにする。
次に、ドロドロにした原料を機械で抄いていく様子をご説明いただきました。
ローラー機械の上で和紙が抄かれていき、乾燥までが一連の流れになっています。
出来上がった和紙は乾いて機械に巻き取られていきます。
平判へ巻き戻しする作業は、すべて手作業になります。
断裁して紙のサイズを均一にする作業。
機械抄きで出来上がった美濃和紙を巻きとっていく作業、
積み上げていく作業、断裁作業の様子をじっくり見学させていただきました!
丸重製紙企業組合さんでは、写経用の薄い紙や障子などの透かし模様が入った紙、
正月の歌会で使う懐紙、防虫剤用の紙など、私たちの生活の中で
身近にある紙を作っています。
数少ない手漉き職人さんの技術を機械で補って、「美濃和紙」を
全国へ流通させていく(同じ品質、同じ規格のものを需要に合わせて作る)ということも
伝統を守っていく上で大切なことなんだなぁ~と改めて思いました。
(焼き物を生産する上で、機械を使ったり、型を使ったりすることと同じ♪)
そして「MINO JAPANESE PAPER」として、美濃和紙を新たなカタチで
海外へ紹介していくという試みも素晴らしいと思いました!
美濃和紙ブラザーズのFacebookページでは、
「和紙の事ならワシらに聞け!」というタイトルの通り、
機械抄き専門に誇りをもった【兄】【弟】が美濃和紙の魅力と美濃の情報を
独特の“美濃弁”で伝えています。笑
ご興味ある方は、Facebookページをご覧下さい♪
焼き物(美濃焼)の生産にも使われている和紙!?
「美濃焼(焼き物)にも和紙は使われているんですよ!
(焼き物の生産工程で)焼かれて無くなってしまう運命の紙ですけどね・・・」
と、和紙ブラザーズ【弟】の辻将之さんがおっしゃった言葉が印象的でした。
そう!美濃焼には「銅判(どうばん)」という技法があります。
私の曽祖父(創業者)の代から使われている量産の装飾技法です。
この銅判を作るための「紙(銅判紙)」が丸重製紙企業組合さんで作られているとのこと。
なんと!曽祖父の代からお世話になっている。。。これもご縁ですね。
焼き物の装飾を量産する(流通させる)上で使われる技法に、
上絵付けは「転写(てんしゃ)」、下絵付けに「銅判(どうばん)」があります。
株式会社山源梶田商店で、四代に渡って受け継がれている「金唐草仏具」の装飾。
これは「美濃和紙の良さ(風合い)」と「美濃焼の技法」を合わせて生産しているものです。
模様が印刷された銅判(の紙)を、一つ一つ焼成前の生地に手作業で貼り付けていきます。
その後、焼きあがった生地に「本金(ゴールド)」を職人が塗り上げ、
再度上絵窯で焼き上げて金唐草仏具を完成させます。
美濃焼の「量産」の技法と言っても、必ず「人の手」が加わっています。
丸重製紙企業組合さんの「想い」
「紙を守り 人を育み 社会に貢献する」
「守る」為には、常に「変わり」続けなければならない
「育む」為には、常に「成長し」続けなければならない
「貢献する」為に、我々は在り続けなければならない
美濃焼の伝統技術の一つが現在まで受け継がれているのは、
まさに機械抄きの美濃和紙の貢献があってこそ!
ありがたいことですね。
手造り、手描きだけでは守れない部分を補う。社会に貢献する。
という意味で、機械による量産は「美濃和紙」も「美濃焼」も同じなんだと思いました。
「伝統産業」について、今回は美濃和紙から
「手造りする」事と「量産する」事の2つの重要性を、改めて学ばせていただきました。
幸草紙工房の加納さん、丸重製紙企業組合の和紙ブラザーズ 辻兄弟、
ありがとうございました!感謝☆
Ceramic Arte(セラミックアルテ) by CHIHIRO