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伝統の技が詰まった巨大な玉神酒(昭和初期のモノ作り)

巨大な玉神酒との出逢い

神具のお神酒(みき)を入れる器には、
丸型の玉神酒、細型の並神酒、そして蓋付瓶子(へいじ)があります。

基本的に用途は同じで、(神事に用いる酒器)「お酒(神酒)を入れる容器」として
使われます。 

 

ご家庭などで一般的な神棚に使われるサイズは、通常高さ10cm前後ぐらい。
地鎮祭や神道の大きめ祭壇に使われるものは、だいたい高さ15cm(5寸)~20cm(7寸)ぐらい。
神社での神事に使われるものでも、高さ25cm(8寸)~30cm(尺寸) まで。

それ以上大きなサイズのものは、今まで見たことがありませんでした。

 

ところが、飛び込みで来店されたお客さまが抱えて持っていらっしゃった
玉神酒は!!

巨大な玉神酒(三島神社)なんと☆

高さが 約38cm の巨大なもの! 

形状は、「型」での成型ではなく、ロクロで手びき(手造り)されていて
絵柄はすべて手描き!
とても立派な玉神酒だったのです。 

 

巨大な玉神酒(2合徳利との比較)一般的な2合徳利(右)とサイズを比較した写真

 

巨大な玉神酒に手描きされた絵柄

手描きされた玉神酒の絵柄(錦絵)

 

神具に関する最善のご提案をさせていただきます

 さて、お客さまがどうされたのかお話をうかがうと、
「これと同じものは出来ますか?」とのこと。

現在、これだけ大きな形状の玉神酒は生産されていません。
「型」で作る製品は、高さ約30cmの尺寸まで。
(陶芸作家さんでも磁器土を手びきする人は限られています。)

また、玉神酒の絵付けをする専門の職人さんは、みな80歳以上の高齢になり
廃業されました。。。 

 

お客さまのご予算が「いくらでも良い」、納期は「出来上がるまで待つ」
ということなら、ご相談させていただくことも可能でしたが・・・
そういうわけにもいかず、
今回は「同じものを作るのは難しい」という結論になりました。

 

玉神酒を絵付けする職人さん(伝統の技を継承する人)がいなくなったので、
現在、弊社(株式会社山源梶田商店)の絵付け工房では、
臨時に玉神酒の絵付けをしています。 
(流通しているサイズのみ。写真は6寸玉神酒) 

錦玉神酒の絵付け風景

さすがに、尺寸以上の大きなサイズの絵付けは
(生地が手に入らず)できないので、
「名入れ(神社の名前の文字入れ)」を金文字で
尺寸製品に手描きするご提案をさせていただきました。

 

お客さまのご依頼により、玉神酒ではなく、蓋付瓶子(尺寸)への
名入れを承りました。

神具の蓋付10.0瓶子神酒(尺寸瓶子神酒)

蓋付の尺寸瓶子神酒でもかなり大きいのですよ!
ちなみに、当店セラミックアルテで販売している一番小さなサイズは・・・

神具 蓋付2.0瓶子神酒

こちら! 白蓋付2.0瓶子神酒

とっても可愛らしいサイズ♪(⌒▽⌒)
マジックと比較するとわかりますか?

神具 蓋付2.0瓶子のサイズ比較

 

昔の人が残したもの(伝統の歴史)

 それにしても、巨大な玉神酒はどこの誰がいつ作ったのでしょう??

お客さまと色々お話をしたら、
「木箱に入ってたから、木箱も見せてあげる!」と。

巨大な玉神酒が入っていた木箱(奉献 三島神社)なんとまぁ!古めかしいボロボロの木箱。。。
「奉献 三島神社」 

裏返してみると、

岐阜県土岐郡下石町 寄贈者 各務良平 昭和四年八月十八日

こちらも古めかしい文字で・・・

「岐阜県土岐郡下石町 寄贈者 各務良平 昭和四年八月拾八日」

現在の地名は「岐阜県土岐市下石町(ときしおろしちょう)」
とっくりとっくんのゆるキャラで有名な
美濃焼の町(鶴瓶さんも訪れた町)です。 

昭和四年に寄贈!!
西暦1929年・・・83年前ww

 

裏印「下石町 各務良平」

玉神酒の裏印を見ると・・・「下石町 各務良平」の印が!

すでに亡くなられていますが、
昔は下石町(美濃焼産地)で絵付けをしていた方だそうです。

ご自身で玉神酒の絵を描き、焼き上げて神社に寄贈されたもの。
おそらく、各務良平さんの「作品」だったのでしょうね。

 

曽祖父の時代(仏具・神具の生産が盛んな時代)の人が作り上げたもの。

伝統の歴史がこんな形で目の前に現れ、
とても感慨深く見入ってしまいました。

そしてこの巨大な玉神酒を、
今まで大切に使い続けてきた方たちがいることに
代々受け継がれているもの(伝統)の良さを感じました。 

昔の人が残してくれたモノを
少しでも現代に残していきたい・・・そんな想いがさらに増しました!